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新米ママ、0歳児と学会へいく
0歳児と学会へ
こんにちは。
筑波大学で博士後期課程院生として教育学の研究をしている小林優子といいます。
院生といっても、休学なども使いながら長いこと院生をやっているオーバードクターです。
現在博論執筆中で、在学年限が切れるのが早いか、博士を取れるのが早いかの瀬戸際で頑張っているところです。
そんな私ですが、今年の春に第一子を出産しました。
妊活中は他人の妊娠出産や子供の話にかなりナーバスになっていた時期もあったため、不妊治療(体外受精)を経て授かった子であることを付言しておきます。
妊娠する前は、子供が生まれたらどんな生活になるのか全く想像もできず、研究職ではない職にも就いているため、研究から遠ざかってしまうのではないかと不安に思っていました。
しかし、最近はなんとか時間のやりくりをして、21時から23時までの2時間ほどは研究やその他好きなことに使う時間を確保することができており、周囲の助けも借りながら博論の修正などをしています。
0歳児を膝に乗せてパソコンに向かう姿が少しバズりましたが、実際は0歳児が寝た後にパソコンに向かっていることがほとんどです。
パソコンに向かう時間を確保できたのは自分の中では大きな一歩だったのですが、さらに驚くべきことに、
なんと遠方の学会にも参加することができました。それも2回!
我が子は、生後半年にして、2回も学会に参加していることになります。
M1の頃の私よりも精力的!
生まれる前は、少なくとも1年間は対面の学会には参加できないと思っていたので、自分でも大変驚いています。
そこで今回は、0歳児を連れての学会参加について、私の経験をお話ししようと思います。
子供を持っても学会に参加したい!という方や、
子供を持っている人にも学会に参加してもらいたい!と思っている方にとって
私の経験が少しでも役立てばと思います。
なぜ0歳児を連れて行ったのか
さて、うちの0歳児はいつどこへ行ったのかというと、
9月、生後3ヶ月で理科教育学会全国大会のため高知へ2泊3日、
11月、生後5ヶ月で科学基礎論学会秋の研究例会のため神戸へ1泊2日、
この2回になります。
私は産前産後に里帰りもしていないので子を連れて初めての大移動です。
0歳児を連れて遠方の学会なんて、大変なのになぜ?と思う方も多いでしょう。
まずは、そもそもなぜ0歳児を連れて学会に参加しようと思ったのか、それをお話しします。
高知で行われた理科教育学会の全国大会は、発表の予定もないし参加するつもりはありませんでした。
(というか、発表したかったのですが準備等が産褥期と重なるので無理だと思い諦めていました。)
8月に研究奨励賞をいただけることが分かったのですが、授賞式も欠席のつもりでした。
しかし、受賞のことを研究者である母に話したところ、一生に一度だから行ってきたらと背中を押してもらい、子と夫を引き連れて参加することにしました。
神戸で行われた科学基礎論学会の方は、会員ではないのですが、私の研究テーマにドンピシャのワークショップが開催されることを知りました。
こんな機会はまたとないのだからどうにかして参加できないか...と悩んでいたところ、これまた母が、今度は現地で合流してくれると申し出てくれました。
夫は仕事の都合で来られなかったので、行き帰りはワンオペになってしまうけど、向こうで母と合流できるなら...と、参加を決めました。
どちらも、私の大先輩とも言える女性研究者である母が背中を押してくれたおかげで実現したのです。
私が生まれたことで、自分の研究の優先順位を下げなければいけなかった母。
諦めたこともたくさんあったと聞きました。
そんな母だからこそ、娘の背中を押してくれたのだと思います。
ここで、そんなに行きたいのなら、子どもは誰かに預けて私一人で行けばよかったのではと思う人もいるかもしれません。
私も、出産前ならそう思う一人だったかもしれません。
ですが、母子分離は不可能でした。
なぜなら、母乳で育てていたからです。
3ヶ月の頃には、子は母乳しか飲まず、哺乳瓶からは飲んでくれませんでした。
つまり、子にとって私と離れることは食事を摂れなくなることと同義でした。
私は私で、子が飲んでくれないと胸が張って痛くなり、最悪乳腺炎になってしまいます。
また、子が飲んでくれなければ、いくら自分で絞っても母乳の分泌は減ってしまいます。
(実際、私の母は、第二子が9ヶ月の時に子を置いて出張に行ったら母乳が出なくなりそのまま断乳になったそうです。)
こうしたことを見越して、初めから母乳育児ではなく完全ミルクにするという手もあるかもしれません。
ですが、これも産むまで知りませんでしたが、産後、母乳で育てたいという気持ちがどこからともなく湧いてきて私を支配していたのです。
産むまでは母乳でもミルクでもなんでもいいと思っていたのに、本当に不思議なものです。
やっと軌道に乗った母乳育児を手放す選択は、私にはできませんでした。
産前は、こうした産後の母乳事情について私は全くの無知でした。
心配なのは移動と宿泊
そんなこんなで、子を連れて学会に行ってみようということになったのですが、我が家は茨城にあるので、高知も神戸もかなり遠方です。
高知へ行くには、まず羽田空港まで車で2時間弱、それから飛行機で1時間半移動しなければいけません。
神戸は近所の茨城空港から神戸便が出ているので、空港まで車で30分、その後飛行機で1時間半です。
しかし帰りは飛行機が取れず、新幹線と在来線を乗り継いだので約4時間かかりました。
子をつれてそんなに長時間外にいたことがなかったのでかなり心配でした。
加えて、飛行機も電車も、密室。逃げ場はありません。泣いて手がつけられなくなったら...と考えるだけでと心拍数が上がります。
特に、飛行機は耳抜きがうまくできないと耳が痛くなり泣き叫ぶ場合があるらしいと聞き、戦々恐々としていました。
耳抜きをさせてあげるには、離陸と着陸の良いタイミングを見計らって授乳をしなければいけないそうです。
前述した通り、子は哺乳瓶から飲まないため、母乳をあげるしかありません。
隠して授乳するためのアイテムである授乳ケープなるものは存在するものの、使ったことはなかったし、まして狭い飛行機の中。
しかも離陸と着陸のタイミングで飲んでもらえるよう、子の空腹感もコントロールしなければいけない...。
本当にうまく行くのか、とても心配でした。
飛行機がうまく行ったとして、新幹線と在来線の乗り継ぎ4時間もなかなかです。
そもそもこれまで4時間も泣かせずに過ごせたことは一度だってありません。
ベビーカーを置けるのかも心配だし、飛行機より難易度が高いのではとも思いました。
そしてもう一つ心配なのが宿泊です。
そもそも0歳児が泊まれる場所が限られています。
私一人ならビジネスホテルでいいのですが、0歳児がいるとなると話は別です。
なぜなら、0歳児は大人と同じベッドでは寝れません。
ベッドからの転落や窒息の可能性があり、下手したら命を失いかねません。
そこで選択肢としては、畳の部屋か、ベビーベッドを貸してもらえる宿の2択になります。
このような部屋はビジネスホテルと違いかなり料金が高い上に、そもそも数が少ない。
宿泊先探しもなかなか難航しました。
少し脱線しますが、子連れの参加は一人よりもお金がかかります。
夫についてきて貰えばさらにかかります。
まだ小さいうちは飛行機や新幹線は無料で乗れますが、少し大きくなればそうもいきません。
それに加えて宿泊費も一人分増えるだけでなく、宿のグレードを上げざるを得ないのでもっと高くなります。
科研費で宿泊費を出そうとすると、所属先にもよりますが上限が決められている場合が多いと思います。
子連れで参加する場合はその上限を引き上げられれば良いなと思いました。
(私は今研究費を持っていないので、完全に自費で行ったのですが。)
宿泊先はなんとか見つけましたが、宿泊先でも心配は尽きません。
慣れない場所でいつも通り過ごせるか、
食事やお風呂はどうするのか、
環境が変わって果たして寝てくれるのか...。
退院してから、自分の家以外で夜を過ごしたことのない0歳児。
最悪、2泊3日くらい、ほとんど寝れなくても仕方ないかと覚悟していきました。
しかし、結果、全てがうまくいきました。
高知へ向かう初めての飛行機、空腹感の調節がうまくいかず離陸前にお腹が空いて泣き出したため、仕方なく離陸前に授乳。
そのまま離陸前に飲み干してしまい離陸時は飲めていなかったため、耳抜きの心配をしましたが、大丈夫でした。
着陸時は寝てしまって授乳どころではなかったけれど、それも大丈夫のようでした。
宿泊も、慣れない環境で疲れもあったのかむしろ普段よりよく寝ていました。
高知への長旅は、大成功でした。
この成功が自信となり、神戸へ繋がりました。
高知へは夫もついてきてくれたので機内での授乳中、隠してもらうこともでき安心でしたが、神戸へは一人で連れていかなければいけません。
それでも行こうと思えたのは、高知での成功体験があったからです。
移動から宿泊まで一通りイメージができたので、踏み切ることができました。
最初から一人で子を飛行機に乗せる決断はできなかったと思います。
ちなみに、JALは予約の際に乳幼児を連れていることを入力すると座席に赤ちゃんマークが付き、別の利用者が予約をする際にその座席に乳幼児がいることがわかるようになっています。
また、1000円ほどでランクアップできるクラスJという座席は、通常よりもやや広めの席となっていて、子を抱いて乗ったり、授乳したりするのにそこまで隣を気にしなくても大丈夫でした。
また、スカイマークには、カーテン付きの座席があり(3席となり合わせで一つのカーテンなのでそこは要注意)、授乳などができるようになっています。
授乳とおむつ替えのスペースが必要
移動と宿泊の心配事がなくなって、ようやく学会中のことを考えることができます。
9月の理科教育学会には、学会の初の試みとして託児が設置されたため、それを利用させていただきました。
学内の保育室にプロの保育士さんが来てくれる仕組みになっており、人見知りが始まったばかりで知らない人に抱かれてギャン泣きの状態でも安心して預けることができました。
また、学内の保育室だったため、学会の途中で授乳に行くこともできました。
11月の科学基礎論学会は託児がなかったため、子を抱いて参加するしかありません。
私の母が同行してくれる予定でしたが、ママとパパ以外に抱かれると泣くため、私が抱いている方が迷惑をかけずに済みます。
ですが、どうしても声を出したり泣いたりする可能性があるので、あらかじめ大会事務局へ子連れの参加でも良いかどうか確認の連絡をしました。
この時点で、私は、“子を抱いて参加できるかどうか”しか頭にありませんでした。
確認の連絡をしてから数日後、子を抱いての参加は問題がないとう連絡に加え、開催校にはおむつ替えのスペースがないため控室にパーテーションを設置することを考えているとご提案をいただきました。
そこで私はようやく気がつきました。
子供を連れて行くということは、発表中に迷惑にならないようにするだけでなく、授乳やおむつ替えのスペースをご準備いただかなくてはいけなかったのです。
授乳は私のプライベートな部分ですが、おむつ替えは子にとってプライベートな部分です。
どこでも安心してできるというわけではありません。
そこまで考えずにお願いをしてしまい、私が想像していた以上にご迷惑をおかけすることになってしましました。
最終的に、私たちのためだけの控え室をご用意いただき、授乳もおむつ替えも安心して行うことができました。
思い切って参加してよかった!
そんなこんなで、たくさんの人に迷惑をかけ、助けてもらいながら参加した二つの学会。
初めての子連れ旅行がこんなにすぐに、しかもこんなに遠方になるなんて思っておらず、不安もあって緊張もしたけれど、
思い切って参加してよかった!!!!これに尽きます。
一つは、久しぶりの対面学会だったことです。
コロナ禍にオンラインで知り合った先生方と実際に顔を合わせてお話しすることができ、それはそれは楽しかったです。
そして、母の顔を忘れられたのも、とても良い気分転換になりました。
普段はほぼ一日中、子と二人きりの生活。たまにどこかに出かけても、子と一緒なので、どうしても「母」としての自分です。
それが、研究仲間と会って研究の話をする時間は、久しぶりに手に入れた「母」以外の時間で、涙が出そうになる程、うれしく楽しい時間でした。
また、思わぬ副産物として、子を抱いて参加することにより、目立つ、というのがありました。
憧れの先生がいらしていて、ご挨拶させていただきましたが、子を抱いていたので印象に残ったのではないかと思います。
というか、印象に残っていて欲しいものです。
研究で印象に残らなければいけないのは百も承知ですが、どんな形であれ印象に残ることが大事だとも思うので、これは子の力を借りることができよかったです。
経験が、次の経験に繋がる
0歳を連れて学会に参加した私の経験は、以上です。
さまざまな人に助けてもらい、とても良い経験をすることができました。
子にとっても、良い経験になったのではないかと思います。
そして、ご迷惑をおかけした分際でこのようなことは大変言いにくいのですが、
学会運営にとっても、良い経験になったのではないかと思います。(偉そうにすみません)
参加にあたり、大会実行委員長や委員の方と何度もやりとりをしました。
何が必要なのか、どうして欲しいのか、色々とこちらの声に耳を傾けてくださいました。
その結果、お孫さんのお布団を貸していただいたり、お部屋を用意していただいたりと、さまざまご配慮いただきました。
こうした私のケースが、次に子連れで学会に参加したい人がいた場合に、どう対応したら良いのかのモデルになれば嬉しいです。
ちなみに、学会の託児は、うちの0歳児に限って言えば、あれば安心、でもなくても問題ありませんでした。
ただ、託児がない場合には、安心して利用できる授乳やおむつ替えのスペースが必要です。
ただ、これは、抱っこしていればおとなしくなる性格や月齢だったからでしょう。
離乳食が始まったり、もっと大きくなって暇を持て余したりするようになれば、また状況は変わってくると思います。
(ちなみに11月の学会は、離乳食が始まって2週目でしたが、この2日間は離乳食をスキップしました)
また、今回はどちらも発表はしませんでしたが、発表するとなると途中で抜けるわけにいかないので託児があると安心かもしれません。
20分程度なら抱っこで発表でもなんとかなる気もしますが...
月齢が低い子をつれて遠出するのは心配なことも多かったのですが、片手で抱ける、抱っこしていれば大抵落ち着く、自我がなくわがままを言わない、離乳食もはじまらない...そんな時期が、意外と遠出しやすかったりするのかなと、終わった今では思います。
上で話したように、9月の高知での成功があったからこそ、一人で子をつれて神戸へ行く決心がつきました。
そして、今度は岡山で開催される2泊3日の研究会へお声がけいただいています。
お声がけくださった先生は、私が高知や神戸に子を連れて行ったことを知っているために、お声がけくださったのだと思います。
子を連れて是非と言っていただきました。
母に話すと、「子供がいるからと諦めなくていい時代になった」と喜んでくれました。
しかし、今度は学会ではなく、授業研究を含む研究会です。
子を連れて授業を参観し、協議をすることになります。
さらに、神戸では現地で母が合流してくれ、宿でも一緒だったのですが、今度は完全2泊3日のワンオペです。
どうやってお風呂に入れるんだ...ちゃんと寝てくれるのか...そもそも飛行機大丈夫か...など心配は尽きないですが
神戸への長旅が成功した今、思い切って参加してみようと思っています。
こうして、高知でも経験が神戸へ、そして神戸での経験が次の経験に繋がろうとしています。
まさか、子を産んで半年の間で、こんなに研究活動ができるなんて思ってもいませんでした。
高知に行くまでは、遠方への学会参加なんて到底無理だと思っていました。
それが、2回も遠方の学会に参加して、次は授業研究にも参加しようとしているなんて!
本当に嬉しい誤算です。
自分の経験が、次の自分の経験に繋がり、
その経験を見ていた人が、次の経験の場を作ってくださり、
そうやって一人の子持ち女性研究者の研究の場が広がっていきました。
そんな私の経験もまた、どなたかの研究の場を広げるきっかけになれば嬉しいです。
最後に、周りの助けを借りて実現した学会参加ですが、いつかは私も子育て世代の研究をサポートできる側に回りたいと思っています。
子供がいるといろんなところで迷惑をかけ、いろんなところで助けてもらいますが、次の子育て世代を応援すること、それが、私のできる恩返しかなと思っています。